ひとつのコンセプトを持って作られたデザイナー家具は、そのデザインはさることながら、使い勝手についてもよく考えられています。
特に「名作」と呼ばれるデザイナー家具に関しては、意匠登録の期間が終了しているものも多く、再生産としてさまざまなメーカーから発売されています。
今回はデザイナーにスポットを当てつつ、彼らが生み出した家具についてもご紹介していきます。
アメリカ生まれの日系人であるイサム・ノグチは、1904年生まれのアーティスト。
彫刻や絵画の作品を手がけたり、造園家やデザイナーとしても活躍したりと、幅広い才能を誇りました。
少年期は日本で過ごし、横浜のインターナショナルスクールなどに通いました。
アメリカへ戻り彫刻を学んだイサム・ノグチは彫刻家として活動するようになり、日本でも個展を開きます。
その際に日本の建築家・丹下健三らと知り合います。1951年には女優の李香蘭(山口淑子)と結婚。その後、離婚しますが、北大路魯山人の下で陶芸を学ぶなど、日本との繋がりはひじょうに深いものがあります。
イサム・ノグチのデザインした家具は、メモリアルや庭園などの作品と比較すると少数です。
しかし、その多くがデザイナーズ家具として、現在も多くの人々に愛されています。
中でも「ノグチテーブル」は、家具メーカー「ハーマンミラー(HermanMiller)」のデザインディレクターがノグチに要請し生まれた作品。 現在でも復刻されているノグチの代表作です。
イサム・ノグチのデザイン家具チャールズ・イームズはミッドセンチュリーデザインの巨匠とされ、家具のほかにも建築や映画の世界で大きな功績を残した人物です。
妻のレイ・イームズとの共同作業により、その後のデザイン、特に工業製品デザインに多大な影響を与えました。
建築を学んだイームズは、木材の新しい整形技術を駆使して家具の製作を始めます。
1940年代には合板を使用し、背もたれと座面につなぎ目の無いイスを製作しました。
イームズは合板だけでは無く、新しい素材を使った家具の製作も積極的に行います。
「チェアといえばイームズ」と言えるほど、イームズは優秀なイスを生み出したことで知られています。
イス以外の製品も多く生み出しているにもかかわらず「イームズチェア」と呼ばれることが多いのは、あまりにもチェアのインパクトが強いことが原因なのかもしれません。
家具や建築を含め、デザインという大きな括りでは、20世紀、もっとも活躍した巨匠かもしれません。
チャールズ&レイ・イームズのデザイン家具デンマーク生まれのヴェルナー・パントンは、20世紀のインテリア家具デザインの世界で、もっとも影響力を持ったデザイナーだとされる人物です。
主にプラスチックを使用した、先進的で未来的なデザインは、特徴的で鮮やかなカラーをまとっていました。1960年代をイメージするならば、そこにはヴェルナー・パントンのデザインがある。そう言ってもいいほど、パントンの作品は60年代を思い起こさせます。
中でもパントンチェアは、そのビビッドなカラーと美しいシェイプから、現在もデザイナーズ家具として高い人気を誇っています。
ヴェルナー・パントンのデザイン家具デンマーク生まれの家具デザイナー、ハンスJ.ウェグナーも、20世紀に大きな活躍をしたデザイナーです。
イームズ同様、ウェグナーも多くのすばらしいイスを生み出しました。
母国デンマークに拠点を置き、最初のシリーズ「チャイナチェア」の生産を始めました。
1949年にはシリーズ最終作がリリースされますが、このイスがウェグナーの代名詞ともされ、今も多くの人々に愛されている「Yチェア」です。
シンプルながらも、何か彫刻を思わせるラインが特徴的な「Yチェア」。
木を手作業で曲げながら作る、技術の結晶とも言えるイスです。
北欧デザイナーズ家具の代名詞とも言えるハンスJ.ウェグナーです。
アルネ・ヤコブセンはモダンデザインを代表する建築家で、ハンスJ.ウェグナーやヴェルナー・パントンと同じくデンマークの出身です。
多くの有名建築の設計を担当したほか、イスに代表される家具のデザインを手がけました。
モダニズムを牽引し、1961年に完成したSAS(スカンジナビア航空)ロイヤルホテルでは、建築から家具のデザインに至るまですべてを担当。
この時にスワンチェアなど、数多くの代表作品が生まれています。
アルネ・ヤコブセンの代表作品は、現在もデザイナーズ家具(ジェネリック家具)として手に入れることができます。
アルネ・ヤコブセンのデザイン家具フィンランド出身の建築家エーロ・サーリネンは、家具のデザインを多く手がけたことでも知られています。
10代でアメリカに渡った後、チャールズ・イームズと協同し、ニューヨーク近代美術館が主催した家具のデザインコンペに応募します。
素材として合板を使用したデザイン家具は、コンペにて高い評価を得ました。
ニューヨークJFK国際空港のターミナル5など、数々の有名建築を手がけていますが、家具ではチューリップチェアやエグゼクティブチェアがよく知られています。
ル・コルビュジェはスイス出身の建築家で、現在ではミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライトとともに「近代建築の三大巨匠」とされています。家業の時計職人を目指していたものの、視力が弱いというハンデをかかえていたため、建築への道に進むことを決意します。
ル・コルビュジェは、ひじょうに多くの建築物のデザインを担当していますが、その中のひとつが上野にある国立西洋美術館です。
1929年には、LCシリーズという家具のシリーズを発表。モダンで洗練されたデザインを持つLCシリーズは、現在も多くの人々に愛用されています。
ル・コルビュジェのデザイン家具デンマーク出身のケアホルムは、工芸学校で家具作りを学んだ本物の家具職人です。
工芸学校を卒業した後は、高級家具ブランドのフリッツ・ハンセンで働いていたこともあり、その後も同社との関係は継続しました。
北欧モダニズムを代表するデザイナーですが、素材にスチールを使用した作品を多く手がけました。
「PK22」は、ケアホルムが手がけた作品の中でも、もっともよく知られているものです。
ミース・ファン・デル・ローエの名作として知られる「バルセロナチェア」に感化されて作られたと言われています。
「PK61」は、現代的で透き通るようなスタイリッシュさが特徴のコーヒーテーブルです。
PK80は、ベンチタイプのソファで、ニューヨーク近代美術館にも設置されています。
フィン・ユールはケアホルムと同じくデンマーク出身の建築家であり、家具デザイナーです。
彫刻により家具をシェイプするかのような、北欧デザイン家具らしい、温もりを感じられる家具を生み出しました。
ペリカンチェアは、ペリカンが羽ばたきをするような、独創的な肘掛け部分の形から名付けられました。体を包むような座り心地が癒やしを与える名作です。